不安を感じたり、気分が落ち込んだりしてしまうという精神状態は、誰でも経験するものです。こうした症状が強い状態をうつ状態といいますが、重症である場合にはうつ病と呼んでいます。うつ病の種類は、発症する原因や症状の程度によって、身体因性、内因性、心因性に分類されます。身体因性とは、アルツハイマー型認知症のような脳の病気や、糖尿病、慢性腎不全、脳腫瘍などの身体的な病気や服用している薬物が原因となって、うつ状態となるケースです。これらの要因を取り除くことにより、自然に治癒します。また、内因性の「単極性」は大うつ病とも呼ばれ、典型的なうつ病のタイプと考えられます。「抑うつ気分」あるいは「興味や喜びの喪失」という主要症状のいずれかを含む、5つ以上の症状が2週間以上継続すれば、該当するものと診断されます。環境のストレスに影響される場合もあれば、特に原因がないまま起こることもあり、再発を繰り返す傾向にあります。一方、「双極性」は躁とうつを繰り返す、いわゆる躁うつ病です。うつとは別の疾患と考えられ、治療法も異なります。心因性は、精神的なショックや心理的な葛藤などによるストレスに起因しています。本人の性格や環境が強く関係しており、「抑うつ神経症」とも呼ばれています。内因性と症状が似ているため、区別がつきにくいという点もあります。また、比較的症状の軽いものとして、「軽症うつ病」が挙げられます。原因や症状は心因性とほぼ同じですが、精神的な症状よりも、むしろ身体的症状が多くなります。ほぼ同定義のものに「仮面うつ病」があります。ほかにも、高血圧やリウマチなどの慢性的な病気の治療がストレスとなったり、ライフサイクルの変化に伴って引き起こされたりするうつ病もあります。高齢者となると、身体の衰えからストレスが加わり、不安感や焦燥感を強く意識したり、体調不良が現れたりすることがあります。女性では、産後や更年期にうつ状態に悩まされるケースがよく見られます。このように一口にうつ病といっても、種類は実にさまざまです。そして、どのタイプであるかによって、患者本人の心理状態や周囲の取るべき対応は大きく異なってきます。たとえば、「早寝早起きをする」「薬を飲む」「ゆっくり休養をとる」などの行動が有効な場合もあれば、逆効果となって心理的な圧迫となる恐れもあります。うつの種類に関しては自己判断をしないで、早期に専門医の診察を受けて、適切なアドバイスをお願いすることが大切です。たとえ時間がかかったとしても、「どんな種類のうつ状態であっても快方に向かう」と信じながら協力していきましょう。